今日の樹木vol.4「ブドウ」ワインの為に極められたツル植物。
歴史を見ると、欧米の人達がどれだけワイン好きだったか分かる。
現在のブドウという品種の、極められた改良を見ると、古代から欧米の人たちがどれだけワインを愛してきたか分かります。
歴史をたどると、なんと新石器時代からブドウを栽培しワインを作っていた可能性があるそうです。
ギリシアを支配したローマ帝国の時代にはワインは帝国中に広まり、そのためのブドウ栽培も帝国各地で行われるようになった。
大航海時代がはじまり、各地にヨーロッパ人が植民するようになると、移民たちは故郷の味を求め、ワインを製造するために入植先にブドウを植えていった。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A6)
ブドウは、人の生活になくてはならないものとなり、品種改良が繰り返される。
ヨーロッパブドウはワイン製造とともに拡大していったが、この過程でワイン製造に不向きな在来種が淘汰され、ヨーロッパや西アジアにはこの種しか残っていない。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A6)
この記述が恐ろしい…。
ブドウ側にも思うところがあったと思いますが、意図してもしなくても、人の歴史と共にその種が改良された。
そして、ブドウに限らず多くの栽培種は、人の利用の価値によって改良されたものだけが残って行く。
こういうことを知ると、僕は山梨県清里高原の山奥で偶然みかけた、天まで届くくらいに葉を茂らせたヤマブドウの群落を思い出します。
人の生き方に関係なく、伸び伸びと生を全うするブドウの野生種。
でも、僕たちの生活にブドウはなくてはならないのは事実。
今回は、山梨県南巨摩郡富士川町の山際さんのブドウ畑をご案内します。
ブドウで有名な都市と言えば山梨県甲州市ですが、なんと鎌倉時代初期に中国から輸入された東アジア系ヨーロッパブドウが自生化したものから栽培が始められたと言いますから、この土地のブドウ栽培の歴史の深さを知ります。
こちらが山際さんのブドウ畑。
元々は別の農家の方が栽培していた場所を、農家さんの高齢化などにより、耕作放棄地になるところを、山際さんが借り受けて栽培しているとの事。
最初は虫が付いたり、病気になったり、でまともに実がならず。
このブドウ畑を世話するだけでどれだけの労力が必要なのか、山際さんは語ります。
例えばサラリーマンの人たちが働く時間の何倍もかけて世話をして、それでも病気にやられてしまうと、結果としてほとんど儲けにはならないような世界です。
これまで涙を飲んできた畑も、今年は本当に綺麗に実り、喜びもひとしおです。
喜びを分けてもらうように、証も少し食べさせていただきました。
濃い栄養が体を駆け巡るくらい美味しい。
少しの酸味とたくさんの甘みで、最高の味です。
この畑は、初心者でも栽培しやすいように、ブドウの木がY字に剪定されています。
つまりあちらこちらいろんなところから枝が出るのではなく、一つの枝が両側からまっすぐ伸びるようにしているのです。
こうすると、農薬をかけるべき場所が限定される為、少量で済むこと。
収穫の時も一列に並んでいるので楽だという事です。
農薬を使っている、と言うといろんな人に怪訝な顔をされる。
これは、いろんな農家さんから言われる話です。
一昔前なら、農薬が当たり前に使われていた時代。
現代では、減農薬、無農薬が求められる時代です。
「良い農家=農薬を使わない」という現実と解離した認識が消費者の間に広まっているのかもしれません。
もちろん、農薬を使わない方が良いに決まっているのですが「農薬を使わないで農業をやってみてくださいよ」とあらゆる農家さんは言います。
苦しい思いをして生産数を維持し、生活を支えている農家さんに
草取りをする膨大な手間。
虫にやられて生産数が激減する事実。
を踏まえても、農薬を使わないでくださいよ、と安易には言えない事実があります。
これまでやってきたことを急激に変えるには、どこかに犠牲が伴います。
「奇跡のリンゴ」の話を知っている人はそれがどんなに大変か分かるかと思います。
「本当に変わるべき物事は、カタツムリの歩みで変わる」
と言われるほど、僕たちは物事の変化を、もっと長い目で見たスパンでも考える必要があるのかもしれませんね。
樹木を勉強していると自然は、どの場合もとても長いスパンでシステムが構築されているのを感じます。
長くなりましたが、この場合は、農薬を減らす、手間を減らす一つの方法として「樹形を変える」という方法を取っている訳です。
さて、この実は「種なしブドウ」です。
「種なしブドウ」に関わっているのはジベレリンです。
ジベレリン:植物ホルモンの一種。生長軸の方向への細胞伸長を促進させたり、種子の発芽促進や休眠打破の促進、老化の抑制に関わっている。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A6)
1950年代後半に、岸光夫がジベレリンを用いてデラウェアの果粒を大きくする試験を行っていた過程で、偶然に種ができずに大きくなることを発見し、種無しブドウ生産の実用化につながった。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%99%E3%83%AC%E3%83%AA%E3%83%B3)
山際さんによると
「通常、植物は種を作ってしまうと生き物としての役目を終え、栄養も回収してしまう」
「種なし処理は、植物ホルモンを与えることにより、ブドウ自身にまだ精力みなぎる若いままだと勘違いさせる、すると種を作ることなく果実を大きくなる」
なるほど、栽培種とはこうして「植物の意識をコントロールして勘違いさせる」ことにより、人が利用しやすい成果を得るものなんですね。
僕はこういう話を聞くと「植物にとっては詐欺じゃないか」と思ってしまいます。
でも、考えてみたら、多くの生物たちがこうした駆け引きの中で生きていて、お互いに利用しあっていると言えるのです。
ブドウも、ヤマブドウだった時とは考えられないくらい、世界中に繁殖しているのは、人間と相互利用の関係を築けたからとも言えるかもしれません。
もちろん、ブドウの心は分からないのですが。
ただ、僕が思うことは、どんな世界にあっても
「その形が美しく見える」
「その味が美味しい」
ということは、やっぱりそのものが喜んでいるからだと思うのです。
植物は言葉を話すことはできません。
でも、人がそれを見て「綺麗だなあ」と思う時、それを味わって「美味しい」と思う時、人が考える表層の意識を超えたところで、ブドウと人は通じ合っていると思うのです。
そのことは、なんて幸せなことだろうと思います。
ちなみに、ブドウにせよ、ヤマブドウにせよ、アケビにせよ、これらのツル植物は、かなり太い幹を持つまで成長するまでは、結実しないことが多いです。
山中でアケビやヤマブドウの葉はたくさん見かけるも、実がなっているところになかなか出会えないのはこの為です。
人が立ち入らない、日当たりの良い崖の上などに、アケビやヤマブドウの実を発見します。
これは他の樹木を伝って成長していったツル植物が自力で立てるほどの幹まで成長して初めて実を付ける。
最初は他の木に頼るけど、重い実を付ける頃には、迷惑はかけないよ、というメッセージでしょうか。
「ブドウ」基本情報。
ブドウ科。ツル性落葉低木。
栽培ブドウは一つの花におしべとめしべがあり、自家受粉する。このため自家結実性があり、他の木がなくとも一本で実をつける。
ブドウの果実は枝に近い部分から熟していくため、房の上の部分ほど甘みが強くなり、房の下端部分は熟すのが最も遅いため甘味も弱くなる。
ブドウにも食用ブドウと酒造用ブドウがある。
紫色をした皮にはアントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれており、赤ワインやグレープジュースにも多い。絞った後の皮などの滓は、肥料として処理することが多い。
葉も可食であり、西アジアを中心とする地域の料理ドルマの材料に用いられる。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A6)
さて、次の森の歌会は
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【森のシンガーソングライター証(あかし)プロフィール】
森の中で、歌を聴こう。
「森と歌を繋ぐ専門家」として、日本全国の森で、森の歌ライブを展開しています。
森の景色、森の音、焚き火、ナイトウォークなど、様々な自然体験と共に、森の生き方から学ぶ人の生き方を説く「森の歌会」が好評。
クラウドファンディング「【日本初】森と音楽の専門家の大挑戦プロジェクト!失われる森を守るためキャンピングカー生活で全国をまわる!」を達成率132%で達成し、手に入れたキャンピングカー「ココニクル号」で、定住しない生活をしながら、現在日本全国の旅をしています。
本名 山田証。福井県出身。東京都多摩市本拠。シンガーソングライターとしても活動の一方、自然科学にも興味を持ち、林業、造園業、環境教育、インタープリテーションの手法を学ぶ。
2008年「エデン風景」がFM福井主催、福井ホームタウンソングコンテストでグランプリを受賞。
2010年「雨粒ノック」が、エコジャパンカップカルチャー部門エコミュージックにてCMディレクター中島信也氏による「中島賞」を受賞。
2014年 「地球ワット」が、同コンテストにてグランプリを受賞。ミュージシャンとしては初の二度の受賞を達成する。
国土緑化推進機構の機関紙「ぐりーん・もあ 2015 vol.70 夏号」にも登場。
森林インストラクター(全国森林レクリエーション協会)