子どもだって考える。森と生きていくこと.「山梨県の森の旅~七里岩の森のようちえん編」@韮崎市
標高はまだそれほど高くないものの、歩いていると、高原に来たような穏やかな空気の層を感じる。
そんな時間の流れ方をする。
歩いても歩いても、放置された土地はあらゆるパイオニア種に埋め尽くされて、通り沿いに張り出した何本ものクワの木に、無数の実が熟している。
昔はクワ畑だったところかと思う。
森をかき分けて歩いて行くと、突然断崖絶壁に出て、鮮やかな街並みと、どこまでも広い空が一望できる。
七里岩とは?
八ヶ岳の山体崩壊による韮崎岩屑流と呼ばれる岩屑なだれが形成した平坦地から、釜無川の侵食により形成された、川沿いに連なる高さ10mから40mの断崖のことを指す。
台地の形が舌状であり「韮」の葉に似ているので、その先端部のある地域を「韮崎」として、韮崎市の地名発祥のひとつになったとされる。
(ウィキペディアより一部抜 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%83%E9%87%8C%E5%B2%A9)
「森のようちえん」を知っていますか?
多くの場合、園舎を持たない、野山をフィールドとして保育を実施するものです。
室内で預かる、同じ時間を森の中で過ごした方が良い。
という考え方で始まったものですが、普通の幼稚園のように預かり保育をするところや、イベントとして親子で参加する形態を取るものもあります。
僕も、一時期、山梨県北杜市清里の「キープ自然学校」で森のようちえんのお手伝いをしていましたし、東京都青梅市日之出町にある大久野幼児園などは、雨の日も雪の日も子ども達は森で遊び、週に一度は登山をし、ご飯も園長先生自らが竈で炊くというスタイルを印象深く覚えております。
今回は、森のようちえん「のっぽっぽ」さんのご協力をいただいて、この七里岩の森で、親子向け森の歌会「森のおんがくたい」「森のおんがくや」を開催させていただきました。
6/9(木)「森のおんがくや 癒しの森の音あそび」にて、金色の麦畑を、楽器をならしながら歩く。
6/29(金)韮崎子育て支援センター様主催で行った「森のおんがくたい!初夏の森の音あそび」にて、ヒバの老木に音楽で語り掛ける。
さて、このレポートでは7/3(日)に行った「森のおんがくや 皮むき間伐と森の歌」について、詳しく書いてみたいと思います。
「皮剥き間伐」はすごい。
鎌で樹皮に切れ込みをいれて、そこに竹串を差し込んで隙間を作ると、後は一斉に空に向かって皮を剥いでいく。
この瞬間は、子どもでも面白く、派手な瞬間だなあと思う。
剥いたばかりの樹皮の内側は、樹液でひたひたになっていて、舐めてみるとちょっと甘い。
通常、木は根っこから水分を吸い上げ、幹の比較的内側にある「導管」を通って、葉っぱまで水を運ぶ。
葉っぱでは水と太陽の光とCO2を使って光合成が行われ、養分である糖が作られると、今度は枝先の葉っぱから根っこに向かって、養分が降りていく。
養分の通り道である「師管」は樹皮のすぐ裏側を、上から下に向かって、糖を流している。
僕たちがうまそうに舐めたのも、その師管の糖であり、これはシカの大好物でもある。
シカが木の皮をはがして食べるのはこの師管があるから。
この師管が、皮むきで途切れさせてしまうことから、木に栄養が行き渡らなくなり、木は枯れてしまう。
水分も徐々に抜けていき、1年もすると、中身がスカスカの木材になる。
切り倒し、玉伐りにした丸太は、女性でも持てる軽さになる。
これまでは間伐は、重量のある木を切り倒すことから、大変な危険が伴い、また搬出することも大型の機械を使う必要があったから、搬出コストと木材の売値ではとても採算が取れず、人工林は伐ることもできずに放置されていた。
これは大人でも子どもでも、みんなが間伐に関われる画期的な方法。
さて、未就学児から小学生低学年。
この年代に「木の皮を剥く意味」を伝えるのは難しい。
「間伐」の意味だって、うまく伝えられるか自信がない。
皮剥き間伐を指導してくださった山際さんは、とてもうまく言葉にそれをかみ砕いていた。
間伐の意味を、ベテランのGくんが段ボールに書いて説明してくれました。
どうして皮を剥くんだろう?
どうして木を死なせてしまうんだろう?
それをちゃんと心に落とし込むことこそ、森のシンガーソングライターの「音楽」の役割なのです。
子ども達が遊んだり、暇を持て余している時に、なんとなく自然にBGMみたいに歌がある雰囲気にしていきます。
森の中をギターを弾きながらゆっくり歩いて行くと、自然に子ども達が集まってきます。
「何が始まるんだろう?」
この時はごく静かな音楽で、なるべく子ども達の気持ちを「感性」に向かわせています。
そして、集まって来た子ども達。
もう少しテンションが高いので、賑やかな音楽から始めます。
子ども達のお名前を聞いて回る「お名前の歌」
木の枝や枯葉、マツボックリなど、森の中で「音の出るもの=楽器」を拾ってきて、合奏しながら歩く「変な楽器鳴らして」
スギの赤ちゃん。
ヒノキの赤ちゃん。
シカに食べられたリョウブの木。
などにみんなで音を鳴らしてコミュニケーションします。
そうして一通り歩きまわって
「森の絵本読み聞かせ」で少し静かな空間を作ります。
絵本というのは不思議なもので、あんなに元気な子ども達が、どうして絵本を始めるだけで静かになるんだろう?
そして森に寝転がって歌を聞きます。
お母さんもお父さんも、子どもと一緒に寝転がって歌を聞きます。
この時は、人工林ではなく、自然植生の雑木の下に寝転がっています。
「最初はこんな森だったんだ」
「でも人間が、スギやヒノキを植えた」
「どうして植えたんだろう?」
「何に使ってほしいのかな?」
そんな質問をしながら、ゆったりした時間を過ごしたら、いよいよさっき皮むきをしたヒノキの下に集まります。
「長い間お疲れさまでした」
みんなで手のひらを幹に当てて、目を瞑って歌を聞きます。
その間、みんなで想像します。
光がどこから当たっているか。
風がどこから吹いてくるか。
音がどんな風に聞こえるか。
まるでこのヒノキが生きてきた時間のように
たった3分ほど、目を閉じて過ごします。
こんな繊細なプログラムも、ちゃんと子ども達がやってくださったのはびっくりでした。
そして今度は、ヒノキの下に寝転がります。
寝転がることで、背中を付けることで、森と仲良くなる。
ヒノキの真下から、ヒノキがどんな風に伸びて行ったのかを、歌を聴きながら眺める。
今日の子ども達の、いつもと違うところは、自分たちの手で「木の皮を剥いた」ということです。
それはみんな驚いて面白がってはいたけれど、一つの命を絶つということに、大人が想像するより遥かに敏感に感じていたのかもしれない。
木に対して繊細にアプローチするこのプログラムに、これほど素直に子ども達が参加したこと。
これからの森の在り方を、間伐の意味を、ちゃんと考えてくれるのは、これからを担う子ども達の方だ。
最後皮むきしたこの木が、ちゃんと使われるように全員で「どうか良い人生を!」
今回、企画してくださった森のようちえん「のっぽっぽ」さんは、まだできたばかり。
これから子ども達と、この七里岩の森でたくさんの物語を作り上げていきます。
本当に森の歌会を呼んでくださり、ありがとうございました!
韮崎支援センターさんのイベントも含め、また秋にこの韮崎で「森のおんがくたい」がありそうですよ。
ぜひまたご参加ください!
そして、今回、森の過ごし方について、たくさん勉強させていただきました「ますほ里山暮らしを学ぶ会」の山際さんご夫妻。
参加してくださった皆様、本当にありがとうございました!!
さあ、次回の気になる森の歌会は
【山梨】野生のシカとシラカバの地★7/16(土)〜17(日)「森の歌会 清里キャンプ」@北杜市
【森のシンガーソングライター証(あかし)プロフィール】
森の中で、歌を聴こう。
「森と歌を繋ぐ専門家」として、日本全国の森で、森の歌ライブを展開しています。
森の景色、森の音、焚き火、ナイトウォークなど、様々な自然体験と共に、森の生き方から学ぶ人の生き方を、音楽と共にお届けします。
本名 山田証。東京都多摩市在住。シンガーソングライターとしても活動の一方、自然科学にも興味を持ち、林業、造園業、環境教育、インタープリテーションの手法を学ぶ。
2008年「エデン風景」がFM福井主催、福井ホームタウンソングコンテストでグランプリを受賞。
2010年「雨粒ノック」が、エコジャパンカップカルチャー部門エコミュージックにてCMディレクター中島信也氏による「中島賞」を受賞。
2014年 「地球ワット」が、同コンテストにてグランプリを受賞。ミュージシャンとしては初の二度の受賞を達成する。
国土緑化推進機構の機関紙「ぐりーん・もあ 2015 vol.70 夏号」にも登場。
森林インストラクター(全国森林レクリエーション協会)
証の音楽はこちらから聞いてみてください。「パイオニアソング」
森の生き方を知ると、あなたの生き方が変わる。7月は静岡、8月は栃木、群馬で、9月は北陸で、森の歌会のご依頼を受け付けております。1本の木があれば、深い自然を歌と共に感じられます。自然体験団体、森のようちえん、子育て支援、福祉施設様など、体験内容や料金も応相談!
【下記のフォームよりお問い合わせください】
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