地域で歌を聴いてもらうということ。レポート「山梨県の森の旅、果樹園編」@南アルプス市
地域の方と僕が繋がったら、音楽を通して、乗馬センターと地域の皆様がもっと繋がる。
僕が乗馬センターに滞在している間、僕が乗馬センター側に期待されていることは、こういうことだと思いました。
アーティストは、音楽をしていれば良いのではなく、ここではどれだけたくさんの人と仲良くなれるか、が課題なのです。
来年、再来年とまたこの地を訪れた時に、少しずつ関係が出来上がって行って、地域の方が一緒に音楽を楽しんでくださるように。
まだ1年目なので、手始めですが、ここでは二つの果樹園で、少しだけお手伝いをさせていただきました。
塩谷タダオさんの果樹園。
ここでは、スモモの一種「大石早生(オオイシワセ)」の収穫を手伝わせていただきました。
僕をご指導いただいた、塩谷キミオさんの名言。
「あくせく働いて、お金を稼ぐなら、もっと別の仕事をしているよ。もちろんもっと作付をすればもっと稼げる」
「でも俺は、そうじゃなくて、この自然の中で心豊かに仕事をする為に農家をやっているんだ」
素敵だなあと思いました。
その通りです。
朝4時半から太陽と共に収穫を始め
7時から朝ご飯で休憩。
8時から12時までまた収穫。
昼からしばらく休憩やお昼寝。
そして午後から夕方まで収穫。
なかなか大変なスケジュールだと思うけど、やってみると、大変さの割に、嫌なものが一つもない。
整然と並んだ果樹園の真ん中で、たわわに実った果実と向き合いながら、もくもくと作業をする。
これほど、心豊かで幸せな時間があるか。
もちろん、いろんな苦労はあるにせよ、僕はこの塩前の集落に住んでいる皆さんの、穏やかな心を覗くことができました。
果樹園は、畑のようにある時期になったら、一斉に収穫できる訳ではない。
1本1本の木によって、無数の果実が絶妙な熟れ加減を見せ、その色を見ながら、収穫期になった実を選ぶ。
だから、毎日畑全体を見回り、どの畑のどの木を、どの実を収穫するか、判断する。
一つの畑が、ああ終わった、ということはないので、シーズンの終わりまで、ちょっとずつ収穫していく。
これは大変だ。
実は実際の果実は、半分は出荷できずに余ってしまうと言う。
これは人手不足で取りきれない、気がついたら収穫期を逃してしまった実がどうしても出てしまう。
収穫期をすぎたものは地面に落としてしまう。
でも落とすのはもったいないので、南アルプス市にいる時は、出荷できなかった果実がたくさんおすそ分けされてくる。
それこそ、しばらくフルーツは見たくないよ、と思うくらい回ってくる。
僕もまたそのご相伴にあずかり、この時期は朝昼晩と、主食がスモモになった…。
でも、丹精込めた果実を、出荷できないで落としてしまうのは、その立場に立ってみると、やはり悔しいものでしょう。
作業をしていると、本当にそう思います。
美味しくいただきました。
ありがとうございました。
作業機械。台ごと上がったり下がったりする。高さを変えながら収穫していく。
こういう道具もありますw
南アルプス市の「あるある」。自転車をこいで走っているとスプリンクラーに不意打ちされ、びしょ濡れになる。。。僕もやられました…。
「この時期の果樹園はクッパ城のようだ」とHさんの名言w
そんな塩前の果樹園の課題は?
それでも、この塩前の集落の皆さんには、深刻な問題がありました。
それは「高齢化」+「後継者不足」
農地を、外から来た新規就農者に貸し出しする方法は?
キミオさんは、一つアイディアを持っていて
「農地を家付きで、まるごと外から来た若者に貸し出す。道具も農地も揃っているし、若者にアドバイスもできる」
「自分は月にいくらと給料をもらって、アドバイザー兼作業員として、その人たちに雇ってもらう」
なるほど!と思いました。
農家をやりたい新規者には、最初から全部そろっている状態で始められ、元の農家の皆さんは後継者に悩まなくて済む。
実は前に、同じような方法を行政と共に打ち出したことがあったそうです。
どうして、うまくいかなかったのか?
それはやはり、地域に反対する方がいらっしゃったからだそうです。
確かに、どこともしれない人に、自分の農地を任せ、いつかは自分や家族に残したい仕事まで無くなってしまうのではないか、という不安もあるそうです。
よそ者の田舎暮らしがうまく行かない理由のもっとも大きなものは、地域の方々との信頼関係を築けなかったことによると聞きます。
塩谷シュウジさんの畑。
この辺りの農地は、昔は果樹園ではなく、養蚕の為のクワ畑や田園だったらしい。
確かによく見ると、農地には田んぼのような縁がある。
減反政策の時に、この土地に合ったものに転換を迫られ、果樹園になった。
それから、南アルプス市はフルーツ王国と呼ばれるまでになったのだからすごい。
「高齢化」+「後継者不足」問題について。
話してくださった修二さんは、40代。
この集落ではもっとも若いそうで、ほとんどの若者は、農家を継がずに、勤めに出てる。
「農家という仕事に魅力を感じないのかもしれないし、何より農家が稼げないと思ってるのかもしれない」
そういう修二さんの畑はすごい。
いろんな種にもよりますが、今回手伝わせていただいた畑。
昔の農地は、所狭しとモモの木を植えていたが、この畑は、真ん中に一列に10本のみ。
採りきれない数の果実を育てるよりも、高価は品種を大切に育てるやり方。
農薬を撒く時も、ぐるりと周りを一回りするだけで、全体に撒けるし
収穫を効率よくする為に、手の届くところまで枝を下げる形に剪定するなど。
少ない時間で、大きく稼げる方法を考える。
修二さんは、誰にも笑顔で冗談を言う。
僕のようなアーティストが来た時も、真っ先に親しく話してくださったのも、修二さん。
この人柄で、後継者問題に悩む集落に、一手を打とうとしている。
と言っても、本人に深刻な影はなく、あくまで、楽しく、そしてまずは仲良く、がモットーらしい。
「どんなことも、まずは仲良くなってから、始めることだよ。そうすればちゃんとうまくいく」
というのは修二さんの名言。
アーティストは特にそう。
仲良くなっていないのに、自分の歌を聴いてもらおうとしてしまう。
畑の草刈りをさせていただきました!最近の農家の道具はすごいですね。
「皇寿(コウジュ)」という種類の「傘かけ」をさせていただきました
一つ一つ、雨にぬれないように傘をかける。
一日にかける数は約2000個との事。
とても地道な作業…。
それでも、一つ一つの果実に、愛情を持って傘をかけてやる作業は、とても穏やかで幸せな時間でした。
余談ですが、修二さんと集落の方が、面白い試みをしていました。
摘果…不要な果実を除いて、その分他の果実をちゃんと大きくする方法。
このように、二つ並んだ実の一つを取ってしまうなど。
摘果しなくても、木が大きくする実を選ぶ?
実は摘果をしても、残った実の中で、大きいものや小さなものに分かれてしまう。
これは、摘果しようとしまいと、木がどの実に栄養を与えるか自分で判断しているのではないかと思われ、摘果しなくても、大きな実は大きくなるらしい。
すると、作業効率を考えると、むしろ摘果しなくてもよい?
ということを、集落の皆さんと実験しているそうです。
集落に必要なことはまさにそれで、若者がこれまでとは違う方法や、これをやろう、というエネルギーを、常に起こし、集落の先輩と一緒に考え続けること。
シュウジさんの姿勢と、そのおおらかさに、勉強させていただきました。
農家の皆さん、本当にありがとうございました。
子ども達と農園へ。
果実はもぎたてが一番美味い。なにより、畑の真ん中で食べることほどの贅沢があるだろうか。
さあ、次回の気になる森の歌会は
【山梨】野生のシカとシラカバの地★7/16(土)〜17(日)「森の歌会 清里キャンプ」@北杜市
【森のシンガーソングライター証(あかし)プロフィール】
森の中で、歌を聴こう。
「森と歌を繋ぐ専門家」として、日本全国の森で、森の歌ライブを展開しています。
森の景色、森の音、焚き火、ナイトウォークなど、様々な自然体験と共に、森の生き方から学ぶ人の生き方を、音楽と共にお届けします。
本名 山田証。東京都多摩市在住。シンガーソングライターとしても活動の一方、自然科学にも興味を持ち、林業、造園業、環境教育、インタープリテーションの手法を学ぶ。
2008年「エデン風景」がFM福井主催、福井ホームタウンソングコンテストでグランプリを受賞。
2010年「雨粒ノック」が、エコジャパンカップカルチャー部門エコミュージックにてCMディレクター中島信也氏による「中島賞」を受賞。
2014年 「地球ワット」が、同コンテストにてグランプリを受賞。ミュージシャンとしては初の二度の受賞を達成する。
国土緑化推進機構の機関紙「ぐりーん・もあ 2015 vol.70 夏号」にも登場。
森林インストラクター(全国森林レクリエーション協会)
証の音楽はこちらから聞いてみてください。「パイオニアソング」
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