何百年ものスパンで森を考える「うすき林業」キャンピングカーで森の旅292日目。
森のシンガーソングライターとして、もっとも関心があるのは、日本の林業問題です。
間伐問題から、治山治水、バイオマス資源、多面的森林活用。
時代が変わっていく中で、いろんなことが言われています。
では実際の林業の現場ではどんな声があるんだろう?
今回は、臼杵市議の奥田富美子さんからの紹介で、うすき林業さんにお話を伺いに来ました。
ドイツと日本ではどうして森との関わり方が違うの?
社長の後藤さんがまず話してくれたことは、ご自身がドイツに行って学んだ時のこと。
日本ではほとんどうまく流用できず朽ちている国産材。
先進的な森の国として知られるドイツでは、どう違うのでしょうか。
「地域住民が森の中にいることを当たり前としている」
「雑誌の背景がごく自然に森林だったりする」
日本では、都市でも地方でも「自然離れ」が進んでいて、生活の中にどう森を取り入れるか試行錯誤。
でもドイツでは、森の中であることが日常としても、ステータスとしても根付いているのかもしれません。
「一番大きな要素は、ドイツは寒い国であり、燃料として未だに薪が使われているからでしょうね」
なるほど、ドイツくらい寒い国になると、化石燃料や電気の暖房より、薪の本物の炎の方が圧倒的に温かいことを知っているのかもしれないですね。
日本でも東北や北海道に行けば必然的に薪の消費率は高くなるのではないでしょうか。
日本でも鹿児島くらいだと、せっかく薪ストーブを購入しても、ほとんど使わずにいるということもあるそうです。
さて、そんなうすき林業の後藤さんは、主に後藤家の所有する広大な山林の管理生産を行っています。
定期的な間伐をして細めの材をたくさん算出するよりも、初期段階での強めの間伐により、残った立木を樹齢の高い大経木に仕立てていく手法を考えているそうです。
いつの時代も、林業のもっとも深刻な問題は人材不足。
僕も昔、林業を知る為にとある林業会社に就職したことがありました。
現場でたくさん木を伐らせていただいたけど、とても大変だったことを覚えています。
森の為に何かをしたい!
森の中で仕事をしたい!
という思いと、実際に現場で行う仕事は、ずいぶん違いがあると思いました。
うすき林業さんでも、実際には重機を使った伐採から搬出など、そこでは生産現場ならではの慌ただしさがあります。
森を感じる。
というより、僕は
まるで森と戦うように
、仕事をしていたのを覚えています。
でも、本当はその頃の僕が知らなかったのです。
樹木や自然は、人間と違い、何百年、何千年ものスパンで物事を考え、実行している。
林業の人たちもそうなのです。
一見すると森林破壊のような、皆伐風景。
これは、長いスパンで見ると一部にすぎない。
先代から受け継いだ山を、何百年も先を見据えて、付き合って行く仕事。
木を倒し、また木を植える。
そしてその木を、僕らの生活の中で長く使われるように加工する。
山を健康に保つためには、植物のこと、土のこと、気候のこと、天気のこと、地球のこと、いろんなことを総合的に考えなければなりません。
そして木を倒し、木を植え、次世代に引き継ぐ。
これほど長いスパンで物事を考える仕事が他にあるでしょうか。
これを知りたい人が林業をやってみるべきです。
森林大国日本において、森林とどう生きていくのか、次世代に引き継いでいくか。
ちなみに、僕が福井県で林業に従事した時には、春から秋までは仕事があるのに、冬は積雪のために山仕事ができなくなる為
冬の間は一旦解雇扱いにしてもらって、失業保険をもらいながら暮らし、春になったらまた就職する。
というすごいやり方が当たり前に行われていました。
うすき林業の後藤亮子さんが
「あら、じゃあ福井の林業家は冬の間は、うちに来て働いたらいいのに」
「冬は一番人手が足りないのに」
とおっしゃってくださいました。
森林組合だけでなく、全国にはいろんな林業会社があります。
もし、こんな風に季節によってトレードできたら、日本の林業の働き方は面白くなりますね。
ちなみにうすき林業さんではこんなものも。
余った材で作るスツールや、パンなどを乗せるお洒落な板。
こういうもの、東京で買ったらすごく高いんですよ。
材の生産と一緒に、こういうものも流通させて行きたいと話してくださいました。
最後に、僕が臼杵市に来て一番気になっている「うすき夢堆肥(うすきゆめたいひ)」について
うすき林業さんに置いてあったので、少しお話をお伺いしてみました。
うすき夢堆肥は、草木類や豚ぷんという材料を完熟させることで,自然の土に近い完熟堆肥を工場で製造しているもの。
江戸時代などでは、畑に鋤きこむ堆肥は草が使われていた。
これまでの堆肥と違い、原材料として草だけではなく、間伐材なども、堆肥に組み込むということで「臼杵市土づくりセンター」という施設が作られ、生産から流通、ブランド化まで行っています。
余っている木材を活用できるという画期的な方法です。
でも木材を大規模に利用し続けることは難しいと僕は思っています。
例えば大きな施設を作った時、その施設を稼働させ維持できるだけの採算を取りつづけなければならないという問題が起こります。
日本の森林には、間伐材が余っているとは言え、大きな施設には大量の定期的な資源の供給は必要になってきます。
そのことで問題になっているのは「バイオマス発電所」ですね。
原発以外の自然エネルギーとして、木材を使った発電は素晴らしいけど、発電所を維持する為に毎回大量の木材を用意できるのか。
間伐材が足りなくなったらその先はどうするのか。
海外から資源を輸入するのでは本末転倒なのです。
僕たちはこれまで、国産材を使わないで、安価な輸入材に頼り続けた。
だからこの問題が持ち上がっているのに、結局材を輸入しなければならないようになるのでは意味がないのです。
うすき夢堆肥にも、同じような課題があるようです。
大量の木材を確保する為のコストと、採算性でしょうか。
(まとめ)森を学んでいる時に、もっとも人間社会の課題だと思うのは規模です。
小さい規模で行っていることは、始めるのもやめるのも簡単。
リスクも少なく、携わる人々も把握しやすい構造で続けることができます。
でも人間は、大量清算、大量消費という便利で安いシステムを目指してしまう。
一つの大きなシステムで、物事が解決したら、みんな安心で楽だけど、自然界は決してそんな風にはできていない。
だから、何事も規模を大きくして行こうとする人間の性は、どこかで自然界とうまく折り合わなくなってしまう。
うすき夢堆肥はとても素晴らしいものと僕は感じていて、応援したいと思っています。
でもこれを長く続ける為に、森と我々がちょうど良く生きていく為に、試行錯誤しながらも頑張っていただきたいと思っています。
うすき林業さん、今回はいろんなお話を聞かせてくださり、本当にありがとうございました!
次回は、うすき林業さんの森での現場を観に行きたい!
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【森のシンガーソングライター証(あかし)プロフィール】
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「森と歌を繋ぐ専門家」として、日本全国の森で、森の歌ライブを展開しています。
森の景色、森の音、焚き火、ナイトウォークなど、様々な自然体験と共に、森の生き方から学ぶ人の暮らし方、生き方を学ぶ「ごろんコンサート」が好評。
クラウドファンディング「【日本初】森と音楽の専門家の大挑戦プロジェクト!失われる森を守るためキャンピングカー生活で全国をまわる!」を達成率132%で達成し、手に入れたキャンピングカー「ココニクル号」で、定住しない生活をしながら、現在日本全国の旅をしています。
本名 山田証。福井県出身。東京都多摩市本拠。シンガーソングライターとしても活動の一方、自然科学にも興味を持ち、林業、造園業、環境教育、インタープリテーションの手法を学ぶ。
2008年「エデン風景」がFM福井主催、福井ホームタウンソングコンテストでグランプリを受賞。
2010年「雨粒ノック」が、エコジャパンカップカルチャー部門エコミュージックにてCMディレクター中島信也氏による「中島賞」を受賞。
2014年 「地球ワット」が、同コンテストにてグランプリを受賞。ミュージシャンとしては初の二度の受賞を達成する。
国土緑化推進機構の機関紙「ぐりーん・もあ 2015 vol.70 夏号」にも登場。
森林インストラクター(全国森林レクリエーション協会)