なぜ土砂崩れが起きやすいのか?主婦だからできる森の為の5つのこと。

ヒノキ林。

※ ご意見を頂きながら、一部加筆をしております。

この記事を書いている2018年の梅雨は、全国的に大変な豪雨になっています。
各地で土砂崩れが頻繁に起こり、たくさんの人が被災されています。

今も行方不明者の捜索が続いております。
皆様のご無事をお祈りしております。

この記事では森林インストラクターとして全国の森を旅する筆者が「なぜ土砂崩れが起こりやすくなっているのか?」を解説しています。

そして「僕達がこれからの日常でできること」についてお伝えしていますので、ぜひ最後まで、お付き合いください!

(この記事の目次)(クリックすると移動できます)

・土砂崩れを引き起こす人工林の構造
・日本にはなぜ人工林が多いのか?
・主婦だからできる森の為の5つのこと

土砂崩れ。

・土砂崩れを引き起こす人工林の構造

日本は先進国としてはスウェーデンやフィンランドに続き、世界第3位の森林大国
世界中の人から見ても、うらやましくなるくらい森林に囲まれて暮らしているんです。

国土面積の68.5%が森林!
という環境は、イギリスの森林率が国土の13%であることを考えると、なんと幸せなことかと思いますよね。(参照①②)

周りを見渡せばすぐに森がある環境は

忙しく働く僕達の、ストレスの緩和やリラックスに繋がるだけでなく
心の問題の解決や、子育てにも効果を発揮する素晴らしい環境なのです。

そんな森林が、突如崩れてきて、僕らの生活に牙を剥く。

なぜこんなことが起こるのでしょうか。

それでは、土砂崩れを引き起こす人工林の構造を見ていきましょう。

なんと日本の森林の約4割が人工林!!(参照③)
寝転んで見た風景。

人工林とは、人が木を植えた森のことだと思ってください。
この場合は、建材などに使う木材を量産する為に、一律にスギやヒノキなどを植えた森を差しています。

山の土は、本来草木の根が絡み合った頑丈な「天然のネット」のようなもので支えられています。

これは、一粒の種が芽吹いてから、数百年もかけて森として成長していく過程で作られる貴重な天然のネットなのです。

種が芽吹き、草などが生い茂る。

若い木が成長する、草木の根ががっちりと土を抱え込む。

たくさんの草木が枯れては生まれてを繰り返し、何重にもなる根の構造がどんどん頑丈なネットを作る。

巨大な木の根っこがそれを包み込み、滅多なことでは崩れない森になる。

深い森。

この天然のネットが、今は失われている。

ネットが弱い森林は、簡単に土が外に流れ出し、地中に埋まっていた巨大な岩をも露出させてしまうほどになります。

どうしてこんなことになったのかと言うと

天然の森を伐り払う。

人が使いやすいスギやヒノキを大量に植える。

スギやヒノキの苗が育ちやすいように、余計な根っこなどを取り払う。

材にしたいスギやヒノキばかりが残る。

こんな流れで、人工林が出来上がるからです。

雨の森。

では、スギやヒノキの木では根っこのネットはできないの?

根っこのネットができる為には、スギやヒノキ以外のたくさんの種類の植物、動物の協力が必要なのです。

雑草のような草から、低い木、中ぐらいの木、高く育つ木、ツル植物、地中の虫たち、そこを住まいとする動物達…

いろんな生き物の生活がそこで行われることで、天然のネットは何百年もかけて出来上がっていきます。

スギやヒノキの人工林で行われるのは、良質な材を作る為の森林作業。

余計な下草を伐り払う。
ツル植物や余計な樹木を伐り払う。
材が食害に合わないように、動物や虫が来ないように対策をする…

と言った作業をします。

人工林も人が面倒を見ていれば、ある程度は正常に保たれるそうです。
崩れないようにある段階から下草を生やす為に、適度に林内に太陽の光を当てます。
余計なスギやヒノキを伐る(間伐)、と言った作業をすればいいはずなのです。

ところが、その管理作業すら、多くの人工林では出来ていないそうです。

木材がお金にならない、林業の人手が足りないという理由からです。

結果、このように地すべりを引き起こしやすい森の構造が出来上がっていきます。
地すべり。
(画像参照④)

大雨や土砂崩れのニュースで、はっきりとは言及されることはないものの
強い雨が降っただけでこれだけの範囲で土砂崩れが起こることには、こういう背景があると思われます。

行政側も強い雨が降る度に「土砂災害警戒情報」を発表したり
行政ごとにこのような土砂崩れしやすい場所を示したハザードマップを作っています。
★(例)東京都あきる野市の土砂災害・水害ハザードマップ

ひょっとしたら、日本の多くの人工林がもう山を支えきれない状態になっているのかもしれません、。

僕が九州を旅している時も、大分県中津市でこんな土砂崩れがありました。
この時は、雨も降っていないのに突然裏山が崩れ出し、住宅4棟が巻き込まれて、中にいた住人6名がお亡くなりになりました。
★大分の土砂崩れ、遺体発見6人に 不明者全員の死亡確認。

その後の行政対応を追ってみましたが、土止めなどの工事を施し「特別警戒区域」から「警戒区域」に引き上げることしかできないようでした。
★耶馬渓・山崩れ現場、危険度減へ対策工事 「住民戻る」前提で。

僕達が思っているよりも重大な問題を抱えている日本の人工林…。

まずはあなたの家の裏に山があるなら、きちんと行政の出しているハザードマップを確認してみることをお勧めします。

見上げる。

・日本にはなぜ人工林が多いのか?

何だか、人工林が悪いような印象の記事になってしまいましたが…人工林が悪い訳じゃないんです。

問題はなぜ、管理できなくなるくらい人工林が増えてしまったかなのです。

日本の人工林は1000万ヘクタールを超えると言われており、世界的に見ても異例の広さ。

この項目では、ざっくりと日本の人工林が増えてしまった流れを説明しますね。

これまでの日本の造林の流れを分かりやすくまとめていただいた(森林科学)愛知大学文学部藤田佳之氏「どうしてできたか1千万ヘクタールの人工林」(参照⑤)の内容から、筆者が適宜抜粋してみたいと思います。

人工林が多い一番の原因は太平洋戦争。

(抜粋)太平洋戦争中と戦後の乱伐により森林資源が著しく不足したことにあった。
戦争中には軍用の材資源 の需要が高まり、すぐれた森林資源が次々と強制的に伐採。

戦争が激しくなると原材料が不足し、軍用機や船舶などにも木材が使用されるほどになり
搬出条件のよい育林地では、すぐれた森林資源のほとんどがその姿を消した。

戦後、一面の焼野原になった都市復興するには木材が不可欠となり
すでに乱伐され乏しくなった森林資源のさらなる乱伐が繰り返された。

戦争による食糧難は山間地で焼き畑を復活させ、各地で森林が焼かれ
また食糧増産のため農地の肥料にするための採草地が拡大するなど林野の過度な利用が進んだ。

こんな風に戦争によって山の資源を使い尽くしたことで

「山に水を溜め置く能力がなくなった」「土を留めておく能力がなくなった」ということなんですね。

そのせいで、昭和20年頃には相次いで上陸した台風により、土砂崩れなど日本各地に大水害をもたらしたそうです。

「これはいかん」と昭和25年以降、次々と造林政策が打ち出され、行政主導による森林資源造成政策が始まりました。

戦後の荒廃した森を救う為の復興!とにかくたくさんの木を植えよう!

そして現代に続く深刻な問題は、この後起きたのです。

昭和30年代「造林ブーム」の到来。

(抜粋)昭和20年代後半の復興造林は、戦中・戦後の乱伐採地の植栽がその中心であった。
その点では「再造林」を中心にして林野の緑化を図ったということができる。

それに対して、ここで提案された「拡大造林」は、既存の天然林を伐採し、その跡地にスギやヒノキ、カラマツなどの経済林を植栽し育成していこうという主旨であり、積極的に人工林の面 を増加させようとするものであった。

つまり、日本人が戦後もっと豊かに暮らせるように経済発展を目指した結果「とにかく木を植えてお金に変えよう!」という流れが昭和35年(1960)池田内閣による「所得倍増計画」の中で大きくなっていったそうです。

特に、造林補助金制度もあって、林業家に取っては植えれば植えるほどお金になる時代だった。
とにかくお金になるから、みんなこぞって木を植えた時代。わずかに残っていた天然林すらも、わざわざ伐り開いてスギやヒノキを植えたとか…。

このように、現代に残る1000万ヘクタールもの人工林は作り出されていったのですが…

(抜粋)昭和30年代後半になると、タンカーの大型化で石油価格が安くなり、あわせて石油工業の発展の中で、従来の燃料源の一翼を担っていた薪炭が次第に駆逐されるようになり、山間の村々にまでプロパンガスが普及するようになった。

薪や炭が使われなくなっていったことで、自然林をうまく活用して薪や炭を作ってきた里山のような山も、お金が生み出せなくなり、スギやヒノキを植え「お金になる森」に変えざるを得なかった。

そして高度経済成長期がやってくる!

(抜粋)高度経済成長が昭和30年代半ばから始まると、住宅建設も本格化するようになり、さらに木材需要は増加。
政府は木材供給を確保するため、昭和38年輸入外材の関税を大幅に削減した。実質的な外材輸入の自由化である。

そう、日本にたくさんの木が余っているのに、外国からの材の輸入を促進した。
この結果、みんなが安い外国の材を求めるようになり、結果日本では…

国産材価格が高騰したから木を植えたのに、安い外材ばかり売れるようになった。

たくさんの山主さんが、山林管理では食べて行けなくなり、やがて山林を管理していくこと自体に意欲を失って行きます。

そして現代では鉄筋コンクリートなどの洋風建築が多くなり、木造建築の需要が減っていった。

生活の中で木を使うこと自体が減って行った。

天然林を切り開いてまで植えたたくさんの人工林は、こうして管理が行き届かないまま現在に至っているのです。

木を見上げる。

現在の日本の人工林は

雨を一定期間ため込む「緑のダム」として能力が少ない。
土砂崩れを防ぐネットとしての能力も少ない。
経済林としての効果も望めない。
動物も住めない。

そう、たくさんの森が「人間も動物も使うことができない状態」のまま、放置されているのです。

近年シカやイノシシ、サルなどの動物による農作物への被害が深刻化していますが、これは人間が天然林まで開発してしまったので当たり前のことなのです。

ここまで記事を読むと、もうどうしようもないじゃないか…
と思ってしまうくらいの事態です。

何が根本的な原因だったんだろう?

日本という国が、無理な戦争を繰り返してきたことの自然への後始末を、未だに僕らは続けているんですね。

そして、高度経済成長期にお金に浮かれ過ぎてしまった!

筆者(30代)の世代から見ると、おじいちゃんやお父さん世代!!!とにかくお金に浮かれ過ぎたなあと思ってしまいます…。

戦後の復興に、本当に苦労してきたことの反動でもあったんだと思います。

経済発展して、何不自由なく豊かな生活を送りたい!
という戦後からの願いが、こういうお金に浮かれた時代を作ってしまったのではないでしょうか。

こういう時代を受けて、その後を僕たちの世代が作っていかなくてはなりません。

では、今の日本の森と僕たちは、どんな風に生きて行ったらいいだろう?

僕らの日常生活の一つ一つを、もし少しでも森の為に変えることができたら…

以下の記事は、土砂崩れを直接止めることができる訳ではないのですが「後世の子ども達に同じ思いをさせない」為の記事です。

・主婦だからできる森の為の5つのこと

ノート。
1.紙類を使いすぎない。

紙類の原料はほとんどが木材です。

毎日の生活の中で使われる紙は、森林を切り開いてできるパルプというものを原材料にしています。
その多くは、海外の森林を切り開いて作られています…。

いきなり、日本の人工林のことではなく、海外の森のことになってしまいましたが…
でも、日本の森がこうなってしまった原因が「資源を必要とし過ぎる生活」→「需要に応じて大量生産される」ことにあるのです。

僕らの生活を変えることで、海外の森を日本と同じ状態にしなくて済むかもしれない。

海外の子ども達を自然災害から守ることができる!
電気。
2.電気を使いすぎない。

大量に発電をすることは、自然界にかなりの負担を強いています。

原子力発電所の事故は書くまでもありませんが、火力発電は大量にCO2を発生させますし、水力発電も巨大なダムを使って行うことから、生態系への影響が心配されています。

昨今ではメガソーラーと呼ばれる太陽光発電パネルが、生態系を破壊しています。

電気を求めれば求めるほど、森の生き物に与える負担が大きくなっていきます。

自然環境が本来の在り方を保っていれば、自然災害もおのずと減っていくのです。

電気を使わないことで、環境への大規模干渉を減らせる!

買い物。
3.物を買いすぎない!

まず製品の包装にたくさんの紙やビニールを使います。
その上、それはすぐにゴミになってしまう。
そして商品には、輸送費などのエネルギーコストがかかっています。

「物を買わない」だけで、実はかなりの環境破壊を止める手段になる!

物を買わないだけで…

「海外の森の森林破壊を止める」
「エネルギーコストを抑える」
「石油資源を使わない」

という三つをクリアできる!

・買う前に「本当に必要なものなのか」考えてみる。
・できれば自分で修理して最後まで使う(DIY)!
・食事は買ってくるより、家にあるもので自炊する!
・商品を買うなら、包装を断る!

木製品。
4.国産材の木材製品を使う。

森林浴効果は、製材となっても生きている(参照⑥)。

その手触り、木目、香り…「使われることで人を癒す」と言われています。
家の中に木製品がたくさんあるだけで、室内でも森林の中にいることと同じような効果を感じます。

そんな木製品、どこで買ったらいいの?と思ったら良いサイトありました!

日本の森を救う!国産材の木製品を生み出している有名な会社です。
★オークビレッジ株式会社

国産材製品を買うなら、こちらのサイトも便利です!
★木づかい製品

皮むき間伐1
5.実際に間伐に参加してみる「親子でできる間伐!」。

間伐とは、混み合っている木を選んで伐ってあげること。

今回ご紹介するのは「皮むき間伐」という方法です。

こちらは以前筆者が参加した皮むき間伐のイベントです。
★きらめ樹間伐に行ってきました!7/31(日)森の旅56日目、静岡県牧之原市。

この皮むき間伐の活動は、実は日本全国で行われていて、僕も旅先のいろんな森で皮むき間伐を行っている人に出会いました。

なんと、専門の方でなくても

女性や子どもでもできる間伐!

気軽に参加できるようなので、ぜひ親子で間伐に参加してみてはいかがでしょうか?

関東で皮むき間伐の体験イベントはコチラ!
★森と踊る株式会社

山梨で皮むき間伐が体験できるお宿はコチラ!
★暮らすように泊まる宿「ほっこり屋」

最後に。

いかがだったでしょうか?

日本の森の現状と、今僕たちにできること、少しは参考になりましたでしょうか?

この記事は、けっこうハードな内容になったなあと筆者もびっくりしています。

筆者個人として、日本の森がここまで深刻な事態になってしまった原因は

・ あるものは何でも人が利用しなきゃならないと思い込んでる意識。
・ 何でも際限なく使いすぎてしまう人間の性。

この二つだと思っています。

土地はすべて人が使わなきゃならない?
資源があったら利用しなきゃいけない?

人がまったく使わない、関わらない、放っておいてあげるという部分が、もっとあってもいいじゃないか。
日本の森を、かわいそうな動物達に返してあげられないかな…とも思っています。

今回は「森の為の5つのこと」と題して書いてきましたが…

森の為にできることが、もう一つあります。

それは「広めること」です。

この記事のシェアをしてくださるととても嬉しく思います+゚。*(*´∀`*)*。゚+

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

(参照① https://www.shinrin-ringyou.com/forest_japan/menseki_japan.php
(参照② http://ecodb.net/ranking/wb_frstzs.html
(参照③ http://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html
(画像参照④ http://manpokei1948.jugem.jp/?eid=227
(参照⑤ https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsk/19/0/19_KJ00001916211/_article/-char/ja/
(参照⑥ http://maruchi.org/kinosinpi.html

なぜ土砂崩れが起きやすいのか?主婦だからできる森の為の5つのこと。” に対して4件のコメントがあります。

  1. junko Tkarabe より:

    本当にそうなのだろうと感じています。こういうことを何故知らせないのでしょうか?
    誰もが知っいた方がこれから未来の国や子供たちの為にも、遅すぎるかもしれませんが、知らせることが最優先で、その後の事も考えられる事を残しておくことが大事だと思います。
    現在の自然界は、日本国だけでなく、世界中に異変が起きていますよね。地球が壊れかかっているように感じています。全てが人間がして来たつけのようにも思えます。長い時間掛ってここまで来ている訳ですから、長い時間掛けてやり直しをしなければ、限界まで来ています。
    これから地震も含め、豪雨、猛暑・冬も色々出てくるのでしょうね?
    こういうことは、社会全体に又学校で教えるべきではないでしようか?
    どうぞよろしくお願い致します

    1. morinoutakai_jimukyoku より:

      junko Tkarabe様
      コメントをありがとうございます。まさにおっしゃる通りだと痛感しております。
      僕はこの記事は、日本中を旅していろんな森を見ていて「(関係者は)明らかにみんな分かってる」のに、誰も口にしていないことに悶々としていて、いつか誰かが書くのではないかと待っていたのですが
      耶馬溪の土砂崩れの被害が出ても、西日本の豪雨があっても、誰もこの問題に言及しないので、つい僕が書いてしまった次第です。
      崩れるかもしれないなら、そうかもしれないともっとはっきり教えてあげたら、裏山を持っている人は避難したり、守れる命もあっただろうし、今地球が日本の森がどんな状態なのか、これからどんなことが起きそうなのか、みんなが危機感を持てるように社会全体で学べたら、備えるなりできるのに、このような個人的な発信でしかこういうことを伝えられないのが、本当にもどかしく思います。
      いろんな考え方、いろんな意見があるかと思いますが、この記事を読んでいただいた方は、それぞれが備えてもらえたら嬉しく思っています。

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