今日の樹木「イチイガシ」人は遥か昔から同じ問題を抱えている。臼杵市東神野。
その土地でこそ見られる樹木がある。
「イチイガシ」は、僕の住んでいる関東ではほぼ見られない。
「なんだこのボロボロの幹は!」
とびっくりするくらい、幹が剥がれやすく年を経るごとに崩壊する岩のような形状になっていく、南国特有のカシの木です。
通常、樹皮が剥がれてボロボロになっていくのは、幹の成長点である維管束組織が新たな組織を生み出す時、その外側にある部分が放射状に割れていくからです。
僕が個人的に素晴らしいと思っているのはその樹皮の割れ目が
自分が倒れた時や他の動物がぶつかった時のクッションの役割を果たしていることや
その樹皮の中にたくさんの生き物を住まわせることができるという役割を持っていること。
植物の形にはどの場合にも役割がある。
しかし、イチイガシの場合は「まるで風化する白骨のように」「ここまでボロボロにならなくてもいいんじゃ…」というくらい樹皮が剥がれていく。
いったいどういう役割を持ってこんな風になるのだろう?
今回は、樹齢700年以上にもなるイチイガシの巨木を観に行きます!
大分県臼杵市の山深い集落、東神野を、「うすき巨樹・名木の会」の三田井寿一さんにご案内いただきました。
出会った途端に「そこで取ってきた」という美味しそうなアケビをいただきました!
アケビを食べるのは久しぶりです!嬉しかったです。
三田井さんが住む東神野という集落は、臼杵市の山奥の山肌に展開する、なんとも幻想的な村です。
なんと平安時代から、東神野の地名があったそうです。
明治時代には200戸の世帯が綿や養蚕を営んでいましたが
昭和に入ってからは100戸と減り、産業も紙漉きや藍染への変化していきます。
やはり高度経済成長期に、多くの住民が街へ出てしまい、どんどんすたれていったそうです。
今では日本の多くの集落がそうであるように、高齢化、過疎化に向き合わなければならない集落です。
まずは、熊野神社にご案内いただきました。
このようにしっかり手すりが付いていることで、今でも地元の方がこの神社を利用していることが分かります。
苔むした階段と真新しい手すりが何とも不思議です。
ここの熊野神社は山の上と下に社があり、こちらは下の宮。
この鳥居の背が低いのは、長年の谷に流れ込む土砂によって、徐々に埋まっていったからだそうです。
この下の宮は、なんと「太り権現」と言われているそうで、このお宮の中のご神体である石灰石が大きくなってお宮を突き上げているからだそうです。
確かに突き上げている。
この辺りは石灰石の産出地で、今でも大規模な採掘が行われています。
なるほど、だから石灰石が祀られているんだ。
周りを見ると、無数の洞窟が口を開けています。
この洞窟は、かの風連鍾乳洞と繋がっているそうです。
僕が子どものころなら、探検しただろうか…。
祀られたまま、何の神様か忘れ去れ、森と一体になってしまう祠も。
三田井さんのお宅にはシイタケの菌床栽培の工場がありました。
今まで、原木栽培ばかりに目が行っていたけど、菌床栽培の良さに気が付いた。
このように原木にならないような枝まで、細かくチップにして、菌床に加工することができる。
当たり前のことなんだけど、知識より、現実に生活に即して行われていることで、初めて腑に落ちるという感覚。
この辺りは、放っておくとこの植物が生えてきます。なんでしょう?
答えはミツマタです。
この辺りで、紙漉きが産業として行われていた証拠で、土の中に無数の種が埋まっているのです。
そしていよいよ、熊野神社の上の宮へ。
その鳥居の真横に、見降ろすように鎮座するのは
樹齢700~800年と言われるイチイガシ!
イチイガシの瘤を苗床として生きるマメヅタ。
実はこのイチイガシ、根っこの下に、昔の防空壕があったそうです。
その為、根っこの下には無数の穴が開いています。
そのせいで、一時樹勢が悪くなり、枯れかかってしまったそうです。
慌てて集落の皆さんで根っこの穴に土を入れ、埋め戻したところ、樹勢が回復し、今に至るそうです。
これだけの樹木、生きていてくれて本当に良かった。
洞の中は人がすっぽり入れるくらい。
本当に本当にすばらしい。奇跡のイチイガシ。
さて、こちらは三田井さん宅で見せていただいた写真。
こちらは今でも東神野で行われている伝統芸能「杖踊り」。
「杖踊り」は、毎年春に行われる、踊りと掛け声いさましいお祭り。
元は、その昔、武術の鍛錬を行うと反乱と見なされた時代、こっそり行う為に、表向きは踊りの練習として武術の鍛錬を行ったことが発祥だそうです。
そしてこちらの写真は総勢数百人で行われる「そうめん流し」。
これは今はもう行われていませんが、この三田井さんこそ、人口が都市へ流出して過疎化する集落に危機感を持ち、はるか昔からこの東神野で世代を超えた交流を実現する企画を行い続けた第一人者。
僕がびっくりしたのは、現代でこそ過疎化や、世代間交流は最重要課題としてうたわれていますが
僕が生まれる前の時代でも、今と同じように、この問題に声をあげ、いろんな企画を立ち上げてきた人がいたんだということ。
これも当たり前のことなのかもしれないけど、僕とは違う世代で頑張ってきた三田井さんを前にして、そんなことを強く感じたのです。
三田井さん、今回はご案内いただき、本当にありがとうございました!
オマケ。
神社の境内には何か生き物が住んでいます。
このカヤの実の食べ跡が…
上を見上げると巣穴発見。
この境内の古い木にはモモンガが住んでいるんだそうです。
あのイチイガシの上にもフクロウが住んでいる。
さて、次回のオススメイベントはこちら。
皆さんとお会いできますように。
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本名 山田証。福井県出身。東京都多摩市本拠。シンガーソングライターとしても活動の一方、自然科学にも興味を持ち、林業、造園業、環境教育、インタープリテーションの手法を学ぶ。
2008年「エデン風景」がFM福井主催、福井ホームタウンソングコンテストでグランプリを受賞。
2010年「雨粒ノック」が、エコジャパンカップカルチャー部門エコミュージックにてCMディレクター中島信也氏による「中島賞」を受賞。
2014年 「地球ワット」が、同コンテストにてグランプリを受賞。ミュージシャンとしては初の二度の受賞を達成する。
国土緑化推進機構の機関紙「ぐりーん・もあ 2015 vol.70 夏号」にも登場。
森林インストラクター(全国森林レクリエーション協会)