
日本の森はすごい。みんなに見せたい森の姿がある。
特にこの南沢あじさい山は、後々まで残る印象深い森でした。
この日は小雨。
これがちょうど良い。
快晴だったら、違う見え方をしただろうし、本降りだったら、大変苦労したと思います。
あきる野市の集落の中を、あじさい山までの道のりをゆっくりと歩く。
これがいい。
車で現地まで行って、さあ、着きましたとはちょっと違うのです。
どんな暮らしをしているんだろう?
この道はどこに続いているんだろう?
雨の様子も手伝って、とても穏やかに、ゆっくりと、道を進む。
神社のスギ。光の雨。
ある神社に着く。
境内の立派なスギの木の下に寝転んで、歌を聴いてもらいました。
ほんの5分。
空からは光が差し込み、気がつくと、雨が強くなっています。
不思議なことに、寝転んでいる僕たちには、ほとんど雨がかからないのです。
ただ、いつまでも寝転んでいたいような素晴らしい光。
南沢あじさい山。アジサイの見せる、繊細な色に心奪われる。
ここまで、けっこうな距離を歩きます。
アジサイ山も、常に登りなので、なかなか大変。
一息ついては、常に坂道を登っています。
だけど、スギの木立の中に、所狭しと体現するアジサイ達の色に、こんなに心を奪われるとは。
ザクザクと
息を切らし
その瞬間にふと目に入る
見えない青空を
その一粒に封じ込めた
短い時間の中に
一粒
空と
水と
光が
こんなに綺麗だと体現する
これは、この時に僕が書いた詩です。
この日は、参加者それぞれが、心にとまったアジサイに、自分の詩を書いてみます。
最後にはそれを、僕が歌にさせていただきました。
僕自身は、実はこれまで、アジサイというものをそれほど素晴らしいと思ったことはなく、わざわざ観に行くようなこともありませんでした。
それは「迫ってくるように主張する」と思えるからです(参加者の一人も同意見でした)。
でも、そのアジサイ達が、この険しい山の中にあると、その主張が、スギの木立の荘厳さに混じって、ずいぶん繊細な存在に思えるのです。
アジサイの好き好きではなく、それがどこに咲いてるのか、どんなシチュエーションで、僕たちがそれを見るのか、が大切だと思えます。
自然界の美しさは、見る僕たちの心持ちによって、千差万別に変化していきます。
でも、本当は、僕たちがどう思おうと、自然界の美しさは、常にそこにあり、僕たちにそれを見せてくれています。
それを受け取れるかどうかが、僕たちの心持ち次第なのです。
例えば、好きな女性がいたりすると、その子のことが美しく見えたり、そして相手が自分のことを好きだったりすると、更に美しく見える。
この事は「通じ合っていること」「愛があること」により、美しさが変化することを表す。
すると、自然界の美しさも同じではないでしょうか。
美しいものを美しいと言う時、自然と僕たちは、通じ合っている。お互いにコミュニケーションが成立していると感じます。
アジサイ山の中で、皆さんの歌をメロディに乗せた時、小雨を顔に受け寝転んで歌を聴いた時
このアジサイ山の風景は、特別なものになったと思います。
これほど特別な風景が、日本の森には無数に存在しているのに、それは普段なら通り過ぎてしまうのです。
僕の森の歌や、森の歌会は、そんな日本の森の本当の美しさを、ほんの一瞬、共有できるものであること、それを目指しています。
今回は、南沢あじさい山の南沢さんにお世話になりました。
この山のアジサイは、南沢さんが一本一本、ご自分で植えられたもの。
ゆえに「花咲か爺さん」の異名を持つ。
日本人の美を求める心が、こんな森を作り出した。
日本には見せたい森がある。
驚異的な存在感。山抱きの大樫。
ほんの160m先、と看板にあったので、疲れ果てていた僕たちも、この森の歌会の終わりにと、少し見物に寄ることにしました。
しかし、この160mに、標高がついたりすると、なかなか大変なことになります。
やっぱり最後まで、山道を登ることになって、しまったなあと思うのも束の間、その大樫が見えてきた時には、息を呑んで、これまでのことも忘れてしまうほどでした。
巨大な岩の上から、僕たちを見下ろすように、その大きなシルエットが現れて、それが僕たちが登れば登るほど、その驚異的な全景を表していく様は、文章では語ることができません。
この大樫は、どのくらい前からここにあるんでしょうか。
根っこが巨大な岩を抱くようになっているのは、長い年月の中で、根っこの周りの土の方が流れてしまい、露出したからです。
最初にこの地に種が落ち、芽生え
固い岩盤の間を縫うように根を生やし、大きくなった。
何百年もそこにあり、自然災害が起きて、土が流れてしまっても、固い岩盤に巻きついているおかげで倒れることなく、生き残り、周りに生えてくる新しい森の主として君臨し続けた。
ある日、人間がやってきて、周りの木を全部切り倒し、建材に使うためのスギやヒノキを植え始めた。
でも人間も、この大樫だけは切り倒さず、そこに残して森の主のように敬った。
そして、そのスギやヒノキが大きくなって、古い森を作り上げても、その何百年も前からある大樫は、一際違う存在感で、そこに居続ける。
そんな想像をしました。僕たちは、そんな巨木に、この日に邂逅したのです。
今回ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました!
さあ、次回の気になる森の歌会は
【山梨】野生のシカとシラカバの地★7/16(土)〜17(日)「森の歌会 清里キャンプ」@北杜市
【森のシンガーソングライター証(あかし)プロフィール】
森の中で、歌を聴こう。
「森と歌を繋ぐ専門家」として、日本全国の森で、森の歌ライブを展開しています。
森の景色、森の音、焚き火、ナイトウォークなど、様々な自然体験と共に、森の生き方から学ぶ人の生き方を、音楽と共にお届けします。
本名 山田証。東京都多摩市在住。シンガーソングライターとしても活動の一方、自然科学にも興味を持ち、林業、造園業、環境教育、インタープリテーションの手法を学ぶ。
2008年「エデン風景」がFM福井主催、福井ホームタウンソングコンテストでグランプリを受賞。
2010年「雨粒ノック」が、エコジャパンカップカルチャー部門エコミュージックにてCMディレクター中島信也氏による「中島賞」を受賞。
2014年 「地球ワット」が、同コンテストにてグランプリを受賞。ミュージシャンとしては初の二度の受賞を達成する。
国土緑化推進機構の機関紙「ぐりーん・もあ 2015 vol.70 夏号」にも登場。
森林インストラクター(全国森林レクリエーション協会)
証の音楽はこちらから聞いてみてください。「パイオニアソング」
森の生き方を知ると、あなたの生き方が変わる。7月は静岡、8月は栃木、群馬で、9月は北陸で、森の歌会のご依頼を受け付けております。1本の木があれば、深い自然を歌と共に感じられます。自然体験団体、森のようちえん、子育て支援、福祉施設様など、体験内容や料金も応相談!
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