霧と林内雨。なんという森の姿。森のフィールドレコーディング1日目。福井県大野市。

霧の高原。

↓森のフィールドレコーディング前編はこちらをお読み下さい。限られた時間の中で最高の演奏を。森のフィールドレコーディング1日目。福井県大野市。

僕は天気予報を読み違えた。

14時、確かに思ったより早めに雨はあがったけど…

それは大野市の街の方の話だった。

考えたら僕たちがいる六呂師高原は、標高約500m。

下の方では上がっていても、この場所はまだ厚い雲に覆われている。

つまり、上層の雲が雨でほとんど落ちてしまっても、山沿いの標高の高いところでは、残りの水蒸気や、植物が発する水蒸気が停滞して、まるで雲の中にいるようになる。

案の定、雨が止んでいるはずなのに、僕達がいるところは細かい霧雨が降り続く。

この霧は夜まで晴れないかもしれない…。

霧の森。

それでも、15時にはましな状態になっているはず。

練習しかしてないのに、すでに疲れて冷え切った体。

ラスト15時以降に体の調子を合わせるべく近くの温泉にGO。

徒歩5分で温泉があるという条件も、この森を選んだ理由の一つ。
声の調子が悪くなったら、お湯で体をあたためることができる。

トロン温浴施設うらら館。

本当に良い森を提供いただいたと、ノーム自然環境教育事務所さんに感謝です。

そして15時。
霧が少し晴れてきて、雨も止んだと確信。

ようやく機材を森の中に持ち込んで準備を始めます。

レコ開始1

レコ開始2

林内雨を知っていますか?

樹木は、落ちてくる雨を余すことなく自分の根元に落とせるように、考えられて葉や枝の形がデザインされています。

もちろん雨が上がった直後、まだ落ち切らない葉や枝に溜まった滴が森のポタポタ落ちてくるのですが

それだけではなく、樹木は霧に含まれた水分も余すことなく吸収する為に、霧の水蒸気を葉に付着させ、それもまた自分の根元に落とします。

その為、森の外では雨が止んでいるのに、森の中だけ、雨が降っているという現象が起きます。

林内雨1

林内雨2

今日の森はまさにそれで、すっかり止んでいる雨が、霧の影響で森の中では滴になって至るところで降ってくる。

だから、林内雨の影響を受けない、梢に空がぽっかりと空いたところを見つけて、そこで準備することにしました。

エンジニアの大澤さんの持ってくる機材は、とても高価なものばかりで、濡れてしまっては困る。

だからとにかく濡れないようカバーをかけたり、いろんな対処をしました。

でも大澤さんは大切な機材を、嫌な顔ひとつせずこの森に持ち出してくれました。

感謝です。

レコ準備。

今回大活躍の高性能レコーダー。
マイクなどでボーカルやギターを録るだけでなく、このレコーダーで全体の音や自然音を録る。
レコーダー。

レコ準備。

いよいよ、準備が整い、最初の録音を始めます。

まずは一曲目。

すると、森が反応したかのように、パラパラと雨が降ってきた。

まずい!慌ててカバーをかけなおし、ギターをしまう。

しばらくしてまた雨が止んだ。

さあ今だ、と演奏を始めると、また雨が降ってきた。

またカバーをかけて、雨宿りする。

こんな展開だから、僕の歌のコンディションもあったものじゃない。

レコーディング中。

それでも、思ったより安定したクオリティで演奏できたのは、これまでの訓練と毎日の反復練習で、体に覚えこませたおかげだと思いました。

ちょっとくらい調子が悪くても、体が覚えていれば、体が演奏してくれる。

こうして雨の合間を縫って、録音を続けました。

僕はこんな展開で、日が暮れるまで時間もないことから、今日演奏できるのは良くて3曲くらいまでかと思いました。

でも、大澤さんとの話し合いの結果、日が暮れるぎりぎりまで録ってできれば6曲とも録ってしまおうということになりました。

聴いてみる。

17時、今日初めての太陽が森の中に差し込む。

初めて森が祝福してくれる。

森でレコーディングする時も、森でイベントする時も、僕たちは森の状態に左右される。

つまり、森が僕達を迎え入れてくれなければ、どんなに良い演奏をしても、どんなに良いイベントでも、成功とならない場合が多い。

今日は、森に試されていたなあと思う一日。

そしてようやく夕方、この瞬間、森が受け入れてくれた感じがしました。

5月を選んで良かった。日が長いのでまだ光がある。

ここから僕は残りの3曲を、一気に弾きこなす。

どんな風に演奏したか覚えていないけど、ようやくオープンになった森に対して、全力でこれまでの訓練してきたことを流し込んだような時間になりました。

一休み。

演奏中。

足元の草や、滴の落ちる木々と、差し込む太陽と、ちゃんと会話をしながら演奏できたつもり。

この時の演奏は僕が予想したよりはるかに良い出来で、ほとんどミスもないことが、本当に僕は嬉しかったです。

もちろん細かいところを言えば、この演奏のタッチがどうとか、ここがピッチがずれているとか、いろいろあるのですが、演奏を一通り聞いてみた時に、その時にしかできなかった演奏が、ごく自然な形で現れてきた。

本当に良かった。

森の景色を見ながら、どんな感覚で聞こえるか、自分の演奏を聴いてみる。
聴いてみる2

寝転がって聴いたら、どんな風に聞こえるか、聴いてみる。
聴いてみる3

森に似合っているかな、大丈夫かな?

大丈夫、この演奏でOK!

本日をもって僕のソロ部分の演奏は(本当に日没ギリギリで)録り終えたことになるのですが

樹木や草や鳥たちや虫たちなどの有機物。

雨や霧や風や太陽などの無機物。

いろんな森が織り交ざって、過酷さも、心地よさも両方見せた、なんという森の姿。

森の姿。

こんな森だったからこそ、録れた音と、演奏はどんな風になっていくでしょうか。
皆さん、どうぞお楽しみに。

まずは一日目。
場を支えていただいたスタッフの皆さん。
根気よく付き合ってくれた大澤さん。
場所を貸してくださり、いろんな気配りをくださったノーム自然環境教育事務所の坂本さん。

本当にありがとうございました。お疲れ様でした!

さて、次回のオススメイベントはこちら。

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「森と歌を繋ぐ専門家」として、日本全国の森で、森の歌ライブを展開しています。
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本名 山田証。福井県出身。東京都多摩市本拠。シンガーソングライターとしても活動の一方、自然科学にも興味を持ち、林業、造園業、環境教育、インタープリテーションの手法を学ぶ。

2008年「エデン風景」がFM福井主催、福井ホームタウンソングコンテストでグランプリを受賞。
2010年「雨粒ノック」が、エコジャパンカップカルチャー部門エコミュージックにてCMディレクター中島信也氏による「中島賞」を受賞。
2014年 「地球ワット」が、同コンテストにてグランプリを受賞。ミュージシャンとしては初の二度の受賞を達成する。

国土緑化推進機構の機関紙「ぐりーん・もあ 2015 vol.70 夏号」にも登場。

森林インストラクター(全国森林レクリエーション協会)

森の歌会 vol.19 あの山に登ろう

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