またあの日に向かって。RADIO311で歌うことについて

RADIO311エンディング演奏

2011年6月。
震災から三ヶ月経った日のこと。
初めて震災ボランティアとして、宮城県に入りました。

街が消えてなくなった海岸線沿いの風景に驚愕したのを覚えています。

あの時、土台だけ残して何もなくなった街の後から、無数の草が生えて、まるで草原のようになっていたこと。

人がいなくなっても、植物達はそこからまた森を始めようとしていることに、驚きました。

僕の「パイオニアソング」は、種から草木が芽吹き、また新しいことを始める力強さを歌ったもの。

地元の方を元気付けるつもりで歌いたかったけれど、当時はとてもそんな雰囲気ではなかったのです。

「君なら、君ならやれるさ」と、どんな顔して歌うことができたでしょうか。

その後も、僕は東北の人々の前で「パイオニアソング」を歌うことはありませんでした。
どれだけ時間が経っても、おこがましいように思ったからです。

そして、5年経った今回、東京芸術劇場シアターイーストで、まさかの仮想空間での東北に「パイオニアソング」を歌うことになるとは。

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カマカジラボの代表であり、今回演出の梶原さんの脚本は本当に素晴らしい。

最初、あるTV番組収録の現場で僕の「パイオニアソング」を聞いた梶原さんが、芝居のどこかで使いたいとおっしゃってくださり、ついには森のシンガーソングライターとしての出演となりました。

僕はオープニングのラジオ番組の中のゲストとして、劇本編の肝となる「ふるさと」を歌い

エンディングのラストで、誰もいなくなった舞台で「パイオニアソング」を歌うというものでした。

僕はこの作品があまりに完成度が高く、作品の抱えている重さに加えて、役者の皆さんの目覚ましい成長を見る度に、後付けのように僕の歌があることが、本当に意味のあることなのか分からなくなっていました。

その意味を掴めないまま、東京芸術劇場に入り、更に劇場内の音の響き方に四苦八苦したのです。

「パイオニアソング」は、生音、生声で歌うのですが、劇場の空間は自分の声がまったく響かず、返ってこない。
どれだけ声を張り上げても、客席に届いている実感のない空間。
つまり、空間の響きや環境が助けてくれず、ここでは本当に自分の本来の声のみになるんです。

僕の声って、こんなに小さかったっけ。
こんなに出しにくかったっけ。

いつもは部屋の響き方や、森の中の自然の音に、手伝ってもらっているんだ。
本来の僕の声のみだと、こんな声なんだ。

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その空間での声の出し方も掴めないまま、公演がスタート。

だから僕は、開演前に身体作りから発声確認をして、オープニングの曲を歌い、芝居の間にまた身体作りから始めて発声確認をしてエンディングの歌に臨む、というように、たった二曲の為に万全の体制を作り出すことに集中しました。

あんなに声を出すことに集中することは、自分のライブでもこれまでなかったことでした。

そして、1日2回。4日間で合計8公演

僕がこの空間でようやく、声を出すことに苦労しなくなったのは、千秋楽の2公演になってからでした。

一回一回の歌に真剣に向き合い、森の力も借りず自分の声に向き合う。

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この姿勢は、僕以外の役者みんなが公演の中で行ってきたものです。

ああ、こんな風に、全身全霊をかけて、自分の表現と向き合うんだと。
改めて、役者とはすごいものだと感じました。

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この時ばかりは、歌のみに集中させていただきました。
仕事としてこれを行う時、自分が歌のみに集中できる環境を与えてくださることは滅多にありません。
いつもの僕のイベントは、歌以外のこと、ガイドやイベント進行や安全管理、もろもろ僕は総合的にいろんなものを見るからです。

こんな機会を与えてくださった、梶原さんに
そして、今回一緒に舞台を作ってくださった、役者、スタッフの皆さんに、本当に感謝しています。

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芝居の世界を離れて10数年、ああ、芝居とはこういうものだったと、改めて思い返しました。
そして、何よりこの作品を通し、東日本大震災で犠牲になった方々に、未だ苦労の絶えないたくさんの被災者の皆様に、歌を歌わせていただくことになったこと

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真摯に受け止め、3/11また、黙祷を捧げました。

公演を観に来てくださった皆様、一緒に作っていただいた皆様、本当にありがとうございました!

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「カマカジラボ」
http://kamakaji.com/2016-radio-311

公演集合写真

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